溺愛〜ラビリンス〜
黒王子 坂本悠斗
「ゆうくんおはよう。」
と黒王子に声をかければ、にらみ合っていた視線を私の方に向ける。
黒王子こと坂本悠斗くんは私の幼なじみ。だから幼稚園に上がる前からずっと一緒。
見た目は愛想がなく、目つきが良いとは言えないし人を寄せ付けない雰囲気なので、みんなから黒王子と呼ばれる様になった。
幼なじみだから、私は昔から「ゆうくん」と呼んできた。
白王子のあつくん同様、呼び方を変えるか悩んだけど、ゆうくんが「今まで通りで呼べ。」と言うし、まぁ白、黒王子の呼び方変えてもまだ他にも問題あるので、そのまま「ゆうくん」と呼んでいる。
「ゆうくんどうしたの?」
ゆうくんに不機嫌の理由を聞いた。
ゆうくんは視線をあつくんに戻し、
「柚に触るな!」
と低い声で言い、私の右手と繋いでいたあつくんの左手を振り払った。
あつくんに「手を離して」って、頼もうと思っていたから、本来ホッとするべきだけど、ゆうくんとあつくんの間に流れる冷たい重苦しい空気にどうして良いか分からずオロオロする私。
「坂本くんには関係ないよ。僕と柚ちゃんの事に口を出すのは止めてもらいたい。」