溺愛〜ラビリンス〜
「昼前には翔真が来る。」
健人がボソッと言う。
「ハァー、翔真が来たら修羅場か?」
とため息をつきながら言えば、
「かもな。」
と言う健人。
「翔真は姫の事となると手がつけられないからな。まったく白王子も黒王子もやってくれるな………渉も大変だったみたいだしここからは俺達の出番でしょ。」
俺が空気を明るくするように言うと
「ユズ姫はさぁ…」
健人が躊躇いがちに言葉を切る。
何だ?俺が首を傾げ次の言葉を待っていると、健人が視線をこちらに向けた。
「白と黒、どっちが好きなんだ?」
「はぁ?」
俺は少し大きな声を出してしまって、あわてて声のトーンを落とした。
「どういう事?」
「ユズ姫の白王子と黒王子に対する対応は、どう見ても他と違うだろ。アイツ等にスッゴい笑顔だった…」
忌々しそうに吐き捨てる健人を思わず呆然と見てしまう。
「まぁ黒王子は幼なじみだし、白王子は小学校からの付き合いで今クラス一緒だからね。」
「チッ。」
舌打ちする健人。