溺愛〜ラビリンス〜
次々に声をかけてくる女の子達に短く応えて学校を後にした。
家に帰っても今日の柚ちゃんとの会話を思い出し何も手につかない…
「ハァ…」
柚ちゃんは今頃どうしているんだろう?今日僕と話した事を考えてくれているんだろうか?
時計を見ると10時を過ぎていた。キングに話しを通せか…小学生の頃から僕の前に立ちはだかり、邪魔をし続けたキングこと三浦翔真…
柚ちゃんの絶対的信頼を得ていて一番近くに居続けてきた男…
でも、血の繋がった兄だと思っていたから心の奥底で最後に柚ちゃんを手にする事はできないんだと高を括り、どこかで優越感を持っていた。
だからキングが本当の兄妹じゃないと言った時には、僕の中で長年あったキングへの全ての考えや優越感が崩れ去り許容できなかった…
最も許せない存在になった。そもそも柚ちゃんの兄だと思っていた時だって煙たくて苦手な鼻持ちならない奴だったのに、従兄妹だと知った今、この世で一番嫌いな…いや憎い相手だ。だけど今回キングに話しを通し、許可を得ないと柚ちゃんと話しをする事も許されない…
悔しいがキングに頭を下げない事には、僕と柚ちゃんの間にある溝を埋める事すらできない…