溺愛〜ラビリンス〜

悲鳴や雄叫びが今まで以上に聞こえてくる中、ユズ姫は楽しそうに悲鳴を上げていた。


翔真はそんなユズ姫を守るように手を繋ぎ、ここまで聞こえてくる程の声で叫んでいた。


「柚!」


まったく…どんだけ大事なんだか…


急降下したジェットコースターは続いてクルリと回転するループに差し掛かった。急降下したそのスピードのまま回転して逆さまになるとまた悲鳴が聞こえたが、ユズ姫は相変わらず興奮している。


「キャー最高!」


ユズ姫の声が聞こえた。


「柚!しっかり掴まってろ!大丈夫か?」


どう見てもユズ姫は楽しんでいるから大丈夫だろ?翔真の心配は必要ないから。
でも翔真は心配の余り焦っている。普段の翔真からは想像できないし、この状況を見た奴じゃないと翔真が焦って叫んでいたなんて絶対信じないだろう…そんな事を考えているうちにジェットコースターはループを過ぎて終点へと向かった。

ハア…何とか無事に終わったな。ホッとしているのは俺だけじゃないだろ?


周りを見るとやはりみんな安堵の表情をしている。
ジェットコースターが元の場所に戻りゆっくりと止まった。




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