溺愛〜ラビリンス〜


「知らねぇよ」


憮然と言う黒王子。


「お兄さんの頼みでもそれは無理ですね。」


にこやかだが目が笑っていない白王子。


平行線だな……

翔真が立ち上がり座っていた椅子をガンと蹴っ飛ばし王子達に向かう。


「お前等ふざけるなよ!」


黒王子の胸ぐらを掴む。胸ぐらを掴まれた黒王子は全く気にする様子もない。


「無理なものは無理なんだから仕方ねぇだろ。逆にお前は柚に関わらないでいられるのかよ。」


言いながら翔真の腕を振り払った。


「何で俺が柚に関われなくなるんだ?」


凍りつく程低い声を出す翔真に平然と黒王子が言う。


「同じ事なんだよ。」


気のせいか少し辛そうな表情だ。


「ガキの頃から一緒だったんだ。それに好きな女の傍に居たいと思うのはお前だって分かるだろ。」


こんな黒王子初めて見た。それだけユズ姫に本気と言う事か…ちょっと驚きだ。

相変わらず苦しそうな表情の黒王子に翔真も何か感じる所があるのか、先程までの凍りつく空気がいくらか和らぐのを感じる。





< 36 / 671 >

この作品をシェア

pagetop