溺愛〜ラビリンス〜
次の瞬間、ガンという凄い音がした。翔真が壁を殴っていた。手大丈夫かよ。白、黒王子にあれでもかなり我慢してたんだろう。
顔を見ればさっきの黒王子と同じ苦しそうな表情をしている。
「好きで兄貴になったんじゃねぇ!」。
呟く翔真は誰よりもユズ姫に近い存在だけど、兄妹という言葉が翔真を縛り苦しめているんだ。
「翔真…」
かける言葉が見つからず次の言葉が出ない。だけど今の翔真に何か言ってあげないと…
「ユズ姫にとって誰よりも近くて、誰よりも頼りになるのは翔真だよ。翔真がユズ姫を守らなきゃ誰が守るんだよ?」
俺の言葉に反応する翔真。
「分かってる。」
自分に言い聞かせる様に言うといつもの翔真に戻っていた。
「キングと姫はいつでも一緒に居ないとね。俺達も翔真がユズ姫守るのを手伝うから。」
俺がいたずらっぽく言うとフッと笑って
「あぁ…」
と答える翔真にホントはユズ姫以外の女の子を好きになれれば翔真もこんなに苦しまずに済むのに……と思うが、俺達はユズ姫を姫にしてからずっと二人の事を見て来た。
だから他の女の子にしろなんて翔真に言えない。 翔真にとっての唯一はユズ姫なんだから…