溺愛〜ラビリンス〜
「龍也…」
「お前達の事を黙って見守るのが俺等の役目だって分かってるけどな?でもたまには口出しするぞ。悠斗は優し過ぎる。その優しさがいつか自分の首を絞める事になるかもしれないぞ?柚ちゃんだっていつまでも出会った頃の子供じゃないんだ。守ったり甘やかしたりするだけじゃ関係は変わらない。」
「…分かってる。」
「そうか?」
「あぁ。」
「…なら良い。俺が言う事はもうない。」
龍也の言いたい事はよく分かっている。だが分かっていても、思うままに突っ走れない。
着かず離れず…ガキの頃から俺達の距離はずっと変わらずにここまできた。変わる事を無意識に避けてきたのかもしれないが、これから先、今のままでいられない事も分かっている…
腹を括らなければならない時が近づいている。龍也もそれに気がついているからいつもなら言わない様なお節介をしたんだろう。
柚は俺にとって唯一無二の存在だから…大事で絶対に失いたくないんだ。
授業が始まっても授業内容は耳に入らず、俺は柚とのデートの事に考えを廻らせていた。