溺愛〜ラビリンス〜
階段を上りドアを開ける。外の風が爽やかに体に触れて行く。その心地良い空間を歩く。
立ち止まり胸ポケットからタバコを出してくわえる。ライターで火を着けていると背後から声が聞こえる。
「サボりの上に喫煙か?」
振り返ると壁に寄りかかり座ってタバコを吸っている翔真と目が合った。
「フッ…なんだよ、お前もサボりか?しかも既に喫煙している奴に喫煙て言われたくねぇな?」
「まぁ同じ穴のムジナだな。」
クククッと笑う翔真に俺も笑う。
「フッ…そうだな。」
その後静かな間が空きお互いに視線を逸らさず数分が経過した。
「やっぱここだったな。」
「あ?…俺を探してたのか?」
俺が話しかけると翔真は無表情で俺を見据えて口を開く。
「あぁ。」
「……男に追われても嬉しくないな。」
翔真が珍しく冗談を口にする。
「なんだ女に追われたかったのか?」
俺もわざと冗談で返す。柚以外の女は眼中にないコイツにとって、女に近寄られるのはウザイ以外の何物でもないだろう事はよく分かっている。