溺愛〜ラビリンス〜
女に追われたいなんて思った事もないだろう。
「フッ、冗談だろう。ウザイだけだ。それに柚以外の女は気持ち悪い。」
「…そうだな。」
予想通りの返事が返ってきた。柚以外眼中にない翔真に笑いが込み上げるが、俺も同じだから笑えねぇ。
「…何の用だ?」
その様子はまるで俺の要件を分かっているようだった。
「…頼みがある。」
「頼み?」
翔真の眉間にシワが寄る。俺の頼みの内容が分かっているのか、嫌な予感がしてなのか…
「柚と二人で外出したい。不本意だが、お前に許可を貰わない訳にいかねぇからな?」
俺の眉間にも恐らくシワが寄っているだろう。
「…外出?……どこへ行くんだ?」
翔真が睨み付けながら聞いてくる。まぁ覚悟はしていた。
タバコの煙を吐き出してから答える。
「…まだ柚と話し合ってないから決めてないが、柚が喜びそうな所にしようと思ってる。」
俺は思っている事をそのままに口にした。
「…そうか。」
翔真はそう言ったきり口を開かなかった。