溺愛〜ラビリンス〜

「悠斗。」


「あ?」


「絶対柚は渡さない。」


真顔で真剣な眼差しの翔真と視線が絡む。俺は翔真から視線を外さずに応える。


「フッ。……そのセリフそっくり返す。柚を誰にも譲るつもりはない。」


「……まぁお互いガキの頃からの思いだ。簡単に引けねぇよな?悠斗、柚を泣かせたり苦しめたりするなよ?」


「あぁ…じゃあな…」


「…引き止めて悪かったな。」


翔真の声を背中で聞きながら、俺は屋上を後にした。


屋上の扉を開けると、渉が壁に寄りかかり腕組みをして立っていた。俺達の会話を聞いていたんだろう難しい表情をしている。俺は無視して横を通り過ぎようとした所で渉が口を開いた。


「いよいよ柚ちゃんに本格的にアプローチするのか?」


「…」


そのまま行こうとするとさらに渉が続けて話しかけてくる。


「俺は昔から翔真の味方をすると決めているからな…お前の味方はできない。でもお前のガキの頃からの柚ちゃんへの思いも知ってる…だから邪魔はしない……柚ちゃんを傷つけない限りはな?」




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