溺愛〜ラビリンス〜

屋上のドアを明け外の爽やかな空気に触れると、イライラしている気分が少し落ち着いた。


屋上を進み柵までくると 、ポッケからタバコを取り出しくわえるとライターで火をつける。


大きく吸い込み、深く煙を身体の中に入れる。そして肺から煙を吐き出すと自分の中のドロドロした気持ちも一緒に吐き出す事ができる気がする。

何回かそれを繰り返し気分が落ち着いた。タバコをもみ消してため息をつく。


分かっている。柚にとって悠斗は俺同様、ガキの頃から側にいた信頼できる存在で、恋愛感情云々を関係なく大事に思っている。


だからこそ不安なんだ。もし柚が俺以外を選ぶとしたら……嫌な事だが、今までに想像を何回かした時、必ず浮かぶのは悠斗だった。


誰にも言った事はないが俺が警戒する男の筆頭はいつも悠斗だった。悠斗には負けたくない…柚を渡したくない。そんな黒い思いが胸の中に燻る。悩んでも足掻いても決めるのは俺でも悠斗でもない……柚だ。俺達は柚が出した結論を受け留めなければならない。


柚に俺を選んで欲しい。俺だけを見て欲しい。それだけが俺のガキの頃からのただひとつの願いだ。それが叶わなかった時俺は……どうなるだろう?




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