溺愛〜ラビリンス〜
俺達は暴走族の幹部をやっているが、授業にはきちんと出て真面目にやっているから、こうして授業をサボるというのは珍しい事だ。今朝の事もあり渉は心配したのだろう。
「……誰か待ってるのか?」
俺の様子に渉はもう察しているようだった。
「……あぁ。」
「…そうか……。」
渉はもう何も言わなかった。
「……じゃあ俺は行くぞ?何かあったら連絡しろ。」
「あぁ。」
渉はそのまま帰って行った。
「フッ。」
立ち上がり近くの壁まで移動すると壁に凭れ掛かり、タバコを取り出し火をつけながら笑いが込み上げる。
俺が何となく悠斗の行動を予想して待つように渉も俺の行動を予想してここに来たんだろう。
そして俺が悠斗をここで待っている事も瞬時に察した。渉も悠斗同様、ガキの頃からの付き合いだからな……察するのは当然の事か。渉の配慮に内心感謝をしながらタバコをふかしているとドアがまた開いた。
ドアの方を見ると今度こそ悠斗が現れた。
ドアの辺りから死角にいた為、悠斗は俺に気づかず柵の辺りまで進み立ち止まった。