溺愛〜ラビリンス〜
胸ポケットからタバコを出し、火を点けようとしている悠斗に背後から声をかけた。
「サボりの上に喫煙か?」
驚き振り返る悠斗と目が合った。悠斗はすぐに表情を変え面白そう顔をした。
「フッ…なんだよお前もサボりか?しかも既に喫煙している奴に言われたくねぇな?」
「まぁ同じ穴のムジナだな。」
クククッと笑ってしまうと悠斗もつられたように笑う。
「フッ…そうだな。」
静かな間が空き、お互いに視線を逸らさず悠斗が口火を切った。
「やっぱここだったな。」
やはり柚の事を話をしに来たか…俺は素知らぬ振りで対応する。
「あ?…俺を探してたのか?」
「あぁ。」
「……男に追われても嬉しくないな。」
できればコイツの話を聞きたくないのが本音だ。話の内容も分かっている…だから本音を入れて軽口を叩いた。
「なんだ女に追われたかったのか?」
悠斗は面白そうに聞き返してくる。俺がガキの頃から柚しか見ていない事を分かっていてわざとだ。俺もそうだがコイツも女に追われたいなんて思った事もないだろう。