溺愛〜ラビリンス〜
そして柚に「あつくん」と呼ばれる存在になり現在に至る。とにかく忌々しい存在だ。
俺が持ってないものを持っているアイツが正直羨ましいと思った事もある。
歯の浮く様な事を言ったりストレートに好意を表したり、とてもできそうにない俺とは正反対だ。
だが、アイツと言い合うという形ではあるが、柚に俺が好意を持っている事を間接的に伝える事ができた。アイツと柚を取り合う事がなかったら絶対に無理だったと思う。
そして俺は高校に上がり俺の家、坂本組の若頭になった事で俺の中に更に葛藤が生まれる。
大事だから柚を危険な目に合わせたくない。柚をヤクザの世界に巻き込みたくない。
離れる事が出来ないのに柚を傷つけたくない。俺はどうしたらいいんだ? いくら考えても答えが出ない。
そして今日翔真に呼び出され更に苦しい思いをする事になった。
アイツに兄貴扱いされた翔真はぶちギレていた。翔真も苦しんでいるんだろう。
恋の出口は見つからず俺達は迷宮にいる様だ。
いつか翔真ともアイツともケリをつけなければならない。柚は誰にも渡さない。翔真の出て行ったドアを見つめながら俺は心に誓った。