溺愛〜ラビリンス〜
「……悪かった…怖い思いをさせて。柚は何も悪くないから気にするな?」
「翔兄ぃ…」
「ゴメンな?」
翔真は俺達や他の奴等には絶対向けないような優しい眼差しをユズ姫に向け、少し困ったような表情をしてユズ姫に謝った。
「……ううん…翔兄ぃの事、怖いとか思ってないから…大丈夫だよ。」
「ハイハイ、良かったね翔真。柚ちゃんちょっと、今度の翔真の誕生日暴走の事で打ち合わせするから、総長室か下に行っててくれる?」
兄妹の会話に渉が笑顔で割って入った。
「あっ…うん。分かった。じゃあ総長室にいるね?」
そう言うと、ユズ姫は奥にあるドアに向かい入って行く。
総長室は基本、総長と姫のみが入れる場所だ。二階にある幹部室の更に奥にあり、幹部室からしか出入りできない。
姫を守るためにこの造りになっていると言われている。もし敵に倉庫が襲撃されても、幹部室のドアと総長室のドアはそれぞれ内側からしか開けられない鍵でロックされ、姫を守るようになっている。
ユズ姫には普段から何かあった時のために、内側の鍵のかけ方や緊急時、どんな事があっても鍵を開けない事、開ける時の合言葉を言い聞かせてある。