溺愛〜ラビリンス〜
だから総長室はある意味、翔真よりユズ姫の方がいる時間が長いかもしれない。
ユズ姫が消えた部屋に渉の声が響く。
「翔真、悠斗と柚ちゃんがデートするのが気にいらないなら許可しなきゃ良いだろ?」
「「えっ!」」
俺と健人の声がハモった。
黒王子とユズ姫がデート?何でそんな事になったんだ?
「驚くよね……しかも黒王子が翔真に頼みに来たんだって……」
爽の言葉に更に驚く。
「それで翔真は許可したのか?」
健人が納得いかない様子で聞く。
「……あぁ。」
「どうしてだよ?」
「……悠斗は今度のデートで決着をつけるつもりだ。本気を出してぶつかろうとしている奴の邪魔はできねぇだろ?」
翔真はそう言って煙草を出す。でも俺等のルールで幹部室や総長室はユズ姫の為に禁煙と決まっている。翔真はそれを忘れる位苛ついているんだろう。でも思いとどまって煙草をしまい舌打ちをする。
「そんなに苛々してんなら許可なんてしなきゃ良かったのに。」
爽がため息交じりに言うと、渉が翔真の気持ちを代弁するように言う。