溺愛〜ラビリンス〜
渉の咎めるような眼差しにハッとなり柚を見る。これじゃ柚にあたってしまったのと同じだ。俺は柚の頭を撫でながら謝った。
「ゴメンな?」
「……ううん…翔兄ぃの事、怖いとか思ってないから…大丈夫だよ。」
柚は俺が気を使わないように健気にそう言ってくれた。
「ハイハイ、良かったね翔真。柚ちゃんちょっと、今度の翔真の誕生日暴走の事で打ち合わせするから、総長室か下に行っててくれる?」
渉が笑顔で、明らかに柚をこの場から出そうとしているのが分かった。柚はそれに気づいた風もなく、分かったと言って総長室のドアを開けた。
柚が居なくなると渉はすぐに俺に向かって冷静な、でも怒りの含んだ声を俺に向ける。
「翔真、悠斗と柚ちゃんがデートするのが気にいらないなら許可しなきゃ良いだろ?」
渉の言葉に凌と健人が驚きの声を上げる。
「それで翔真は許可したのか?」
健人が納得いかない様子で聞いてくる。
そうだな……本音を言えば絶対、柚を他の男と二人になんかさせたくない。でもガキの頃から悠斗が柚を大事に想ってきた事は誰よりも俺が分かっている。