溺愛〜ラビリンス〜
お互いに分かりたくないが、相手の気持ちが分かってしまう……厄介な存在だ。そんな悠斗の気持ちを踏みにじる事はできない。
「……悠斗は今度のデートで決着をつけるつもりだ。本気を出してぶつかろうとしている奴の邪魔はできねぇだろ?」
俺はそう言って煙草を出すが、幹部室と総長室は禁煙である事を思い出し煙草をしまい舌打ちをする。
「そんなに苛々してんなら許可なんてしなきゃ良かったのに。」
そんな俺に爽がため息交じりに言う。そうだな……俺だってそう思う。
渉が何も言わない俺の代弁をしてくれる。そして柚の事を気遣い俺に説教をした。
俺が神妙に返事をすると、ホッとした表情をしてから渉が呟いた。
「悠斗の想いに柚ちゃんはどう応えるのかな……」
渉の言葉に部屋が静まり返る。
「……そうだな。もし柚が悠斗の想いに応えたとしたら……」
みんなが息を飲み俺の言葉を聞いている。
「俺は…黙ってそれを見ていられるか分からない……悪あがきして、柚にすがるかもしれないな……」