溺愛〜ラビリンス〜

廊下に入ると壁に凭れた渉がいた。俺を待っていたようだ。


「翔真……」


心配そうな声で俺を呼ぶ渉に答える。


「大丈夫だ。悪かったな?」


「…いや俺も言い過ぎた。ごめん。」


「フッ…気にすんな。俺が情けなかったのは事実だ。」


「翔真良いのか?先に柚ちゃんに気持ちをぶつけなくて。」


「あぁ…俺の気持ちはもう伝えてあるんだ。返事をもらうのが悠斗より先か後かになるだけだ。」


「……そっか…。翔真?」


「あ?」


「こんな事言うと、第三者が気楽にいい加減な事言ってるって思うだろうけど…俺は昔から翔真と柚ちゃんを見てきた。もちろん悠斗も…その俺から見てお前と柚ちゃんの絆はそんな柔じゃない。柚ちゃんは………翔真を選ぶと俺は思う。自信を持て。」


渉の気持ちが痛い程伝わってくる。柚との絆を信じない訳じゃない。柚の事を信じられない訳じゃない。それでも不安になる位好きなんだ。情けなくてもみっともなくても仕方ない。


「あぁ…サンキュー。」


俺の言葉にホッとした表情の渉がいた。





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