溺愛〜ラビリンス〜
ご機嫌を損ねたようだが、柚が俺にムキになってくるのが嬉しい。
「悪かった。気をつけて行って来いよ?」
そう言って頭を撫でると、柚はもう機嫌が直ったようで笑顔で返事をしてくれた。
「うん。」
柚の頭から手を離し悠斗を見る。見るというより睨むって言った方が正しいが……
「………柚の事、頼む。」
「……あぁ…。」
俺と悠斗が睨み合っていると母さんが声をかける。
「さあ、もう行きなさい。グズグズしてると日が暮れちゃうわよ?悠斗君、柚の事遅くならないように送って来てね?うちには心配症な柚の保護者がいるんだから。」
そう言ってウィンクした。
「はい。」
「じゃあ行って来なさい。」
そう言って母さんは追い出すように送り出す。
「行ってきます!」
手を振って柚は悠斗の車に乗り込み出発した。
車が走り去ってもその場から動けず、立ち尽くし車が見えなくなった方向を見つめていると母さんが声をかけてくる。
「翔真。」
母さんに視線を向ければ困ったような顔で俺を見ていた。