溺愛〜ラビリンス〜
「そんなに不安そうにしないの。柚はちゃんと帰って来るんだから。あなたの気持ちは柚に伝わってるわよ。」
やれやれというように背中を押され家に入った。
母さんと二人家に入るとさっきまで柚がいて賑やかだった家の中が異様に静かで落ち着かない。
柚が数時間出かけていないだけでこんな寂しさに胸が締め付けられるなんて……もし柚が俺でない誰かを選ぶ日がきたら絶対に耐えられない。
そんな日がきたらなんて考えただけで気がおかしくなりそうだ……
まんじりともせずただ時間が過ぎる。
「翔真お昼にしましょう。」
母さんに声をかけられて気がつくと昼になっていた。
「もうそんな時間か……」
「そうよ。お昼はさっぱりとうどんにしようかな……どう?」
母さんが明るく言ってくるが食欲なんてない。
「いや昼はいらない。」
そう答えると母さんは笑い出す。
「まったく……しょうがない子ね。小さい頃から柚、柚だったけど……この歳になってもそれが続くとはねぇ……」
「チッ。」