溺愛〜ラビリンス〜

「翔真。まだ学校に居たの?」


母親が話しかける。


「うん。柚の入学式見たくて始業式終わったけど待ってた。」


兄妹か…ホッとして柚ちゃん達家族の会話を聞いていた。
笑顔で兄を見ている柚ちゃんを欲しいと思った。あの子は僕のものだ。どうしても欲しい。

その時から僕が望むものはただ1つ…柚ちゃんだけだ。他には何もいらないから柚ちゃんが欲しい。


入学式の日からずっとこんなに思っているのに叶わないのは、キングと黒王子と呼ばれる悠斗が邪魔をしてきたからだ。






階段を下りると、悠斗がいた。


自然と眉間にシワが寄る。あの入学式の日の事を思い出す。



教室に入ると柚ちゃんがいた。同じクラスなんだ。気持ちが高揚する。自分で口角が上がるのが分かる。そう思った時だった。


「ゆうくん。」


柚ちゃんの声が聞こえた。
柚ちゃんの視線を辿るとそこにいたのは悠斗だった。


「同じクラスだね。よかった。知らない人ばっかりだから、どうしようかと思っちゃった。」


柚ちゃんが嬉しそうに笑顔を向ける相手に胸が苦しくなった。




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