溺愛〜ラビリンス〜
チームの走りなら特攻隊長の健人が先陣を切って行くが、今日はチームの走りじゃない。
昔、俺達だけで走っていた頃はいつも俺が先頭を走り、二番手を渉が走った。別に打ち合わせた訳じゃないが、今日は昔からの走りをするというのが何となく暗黙の了解になっていた。
俺はエンジンを吹かし走り出した。続いて渉がその後を爽、健人、最後を凌の順に走る。昔のままだ。
風を切り走る。本当に久しぶりの感覚だ。後ろを振り返ると、みんな嬉しそうな表情をしていた。
大分走り、街中から外れ街を見渡せる山の山頂へと進み、山道を進んで行く。この道を走るのも随分久しぶりだ。
カーブの多い道を器用にハンドルをさばき進む。
もう少しで頂上になる。頂上は簡単な展望台があり、ベンチが何ヵ所かに設置され眼下に俺達の住む街並みを望む事ができる。
駐車場についた頃には少し夕暮れを感じる景色になっていた。エンジンを止めバイクから下りると、後から来た渉達もバイクから下りる。
久しぶりの景色を見ようと、全員で一番見晴らしの良い東屋へと向かいみんなで景色を眺める。