溺愛〜ラビリンス〜
バイクに戻りエンジンをかける。さっきと同じ順でスタートした。
だいぶ日が暮れて薄暗くなってきたから、ライトを点けて走る。
カーブの多い下り坂を軽快に進んで行く。渉達も俺から一定の距離をとり後ろをついてくる。
今頃、柚はどうしてるだろう… 悠斗に告白されて返事をしたのだろうか?どんな結論を出したのだろう…一時も柚の事が頭から離れない。我ながら本当に重症だな……
山道をかなり下った頃、突然バイクの前に何かが飛びだしてきた。
何だ?
いきなりの事に咄嗟にハンドルを切りブレーキをかける。
キキーッ
ガシャーンッ
ドンッ
「翔真!」
「翔真!大丈夫か?」
「凌、救急車だ!」
「分かった。」
「翔真…しっかりしろ!」
「翔真!」
遠くでみんなの焦った声が聞える。
柚……
俺は柚に返事をもらえないまま死んでしまうのか
柚…もし死ぬなら、その前にもう一度お前に会いたい。お前の胸に抱かれて死にたい……柚……
そのまま俺の意識はなくなった。