溺愛〜ラビリンス〜
この人はこんなに私の事を望んでくれていたんだ。こんなに愛してくれていたんだ……でも私はその気持ちに応えられない……胸が苦しかった。
「ゆうくん…私は……」
「頼む!柚…俺にお前の事を諦めさせてくれ……」
ギュッと強く抱きしめるゆうくんの腕の力に私はもう何も言えなくなってしまった。
「……ゆうくん…は…それ…で気持ちに整理がつくの?」
私は震える声でゆうくんに伝えた。
「ッツ…柚……すまない…。」
そう言うとゆうくんはそっとキスをしてきた。唇を離したゆうくんの目は潤んでいた。
「ううん…」
私にはそれ以上何て言って良いのか分からなかった。
ゆうくんは無言で手を引き歩き出す。
風が二人を包むように吹いていてそれが余計に胸に痛くて切なかった。
駐車場に戻って車に乗ると、待っていてくれた二人は、私達の雰囲気がおかしい事に気づいたようだった。車の中であんなに話していた龍也くんも何も喋らない。車内が何だか重い空気になってしまった。でも今の私にはどうする事もできない。