溺愛〜ラビリンス〜

長いキスが終わり柚ちゃんは俯いていた。悠斗は不安そうな声で


「柚?ごめん。嫌だったか?」


と聞いた。
柚ちゃんの気持ちを気使ったのだろう。
それに柚ちゃんは首を横に振った。


柚ちゃんは悠斗の気持ちを受け入れるって事?自分の顔の表情が無くなって行くのが分かる。

こんなに好きなのに。
悠斗に柚ちゃんを奪われる。恐怖が全身を襲う。


「柚、大事にする。だからすぐでなくていいから返事くれ。」


柚ちゃんをまっすぐに見つめる悠斗。


「うん。」


戸惑いながら答えてる柚ちゃん。


僕が柚ちゃんに言いたかったセリフを悠斗が言った。
僕が抱きしめたかった柚ちゃんを悠斗が抱きしめた。
僕が触れたかった唇に悠斗が触れた。

柚ちゃんへの愛が苦しみとなって胸に激しい痛みを与える。


二人が東屋を後にする後ろ姿をただ見つめながら見送るしかできなかった。




どれ位立ち尽くしていたのだろう。辺りは人気もなく静かだった。

さっき見た光景が頭から離れない。気が狂いそうだ。柚ちゃんは渡さない。絶対に…

僕は凍りついた心の中で強く誓ってホテルを後にした。



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