溺愛〜ラビリンス〜
「翔真!大丈夫か?」
凌が声をかけるが反応がない。俺は翔真を抱えた状態で指示を出した。
「凌、救急車だ!」
「分かった。」
「翔真…しっかりしろ!」
「翔真!」
翔真は血を流し反応をしない。ヘルメットを外すと、額の辺りから出血していて意識がない。頬を軽く叩くと小さく唇が動いた。
「柚……」
聞こえないほど小さな声だったが確かに俺には聞こえた。
暫く茫然としていると救急車を呼んだ凌が戻ってきた。
「渉、場所が場所だからすぐには来ない。でも兎に角すぐ出動してくれる。」
「あぁ……」
「翔真は?」
心配そうに聞いてくる凌に視線を向け首を横に振る。
「…そうか……」
「健人、おばさんに連絡しろ。救急車来て病院決まったら、また連絡する事も忘れず言え。」
「分かった。」
「爽、お前は柚ちゃんに連絡しろ。良いか柚ちゃんをパニックにしないように、余り余計な事を言うな?ちょっと怪我した位の言い方しとけ。」
「了解!」