溺愛〜ラビリンス〜
みんなが出発したのを見送り、俺は携帯を取り出した。かける相手は黒王子の側近の一人工藤だ。
「ハーイ工藤です。」
相変わらず軽い工藤に、緊急時の状況の俺はイラつく。
「黒田だ。うちの姫がまだ帰って来ないんだけど、何処にいるか知っているなら教えてくれ。」
「……」
「おい、工藤!」
返事をしない工藤に更に俺はイラついた。
『チッ』
電話口から舌打ちが聞こえ俺は限界に達する。
「お前ふざけんなよ!今はお前のおちゃらけに付き合ってる暇はねぇんだよ。さっさと姫の居場所教えろ!」
一気に怒鳴ると俺はハァハァと息を切らしていた。少し間があいて工藤が口を開いた。
『…悪いが今日お宅の姫はうちの黒王子が預かる。明日にしてくれ。』
「ふざけんな!ちゃんと帰すって約束だったろう。」
押し問答が繰り返される中、埓があかない状況に俺はため息をついた。この際、緊急事態を話して兎に角ユズユズの行方を突き止める事にした。