溺愛〜ラビリンス〜

柚にこの事実を話さないのも自分の出生を知り俺達家族に遠慮したり、気を使う様になってしまうのが嫌だから。

柚がその事で俺の傍から離れてしまうのが怖いからだ。何も怖いものなどない。柚が居なくなる事以外は…

柚以外いらない。柚は俺のものだ。出逢った日から時間が経つ程、その思いは強くなる。

アイツ等も俺と同じなんだろう。悠斗のあの苦しそうな顔を見てそう思った。だから悠斗にあれ以上言えなかった。鷹宮は思わず殴ってしまったけどな…


だが柚を渡す事はできない。柚は俺のものだ。
そんな事を考えながら柚の教室へと向かった。



今朝は一緒に登校できなかった。いつも柚の顔を見て1日が始まるのに、今日は顔を見ていない。柚不足だ。



1年の階の廊下を歩けば、女達のうるさい声が聞こえ眉間にシワを寄せる。


柚のクラスにたどり着いた。


「柚。おいで。」


教室の後の入り口から声をかければ、教室からも女の「キャー!」という声が響く。うるせぇ。



柚が、「ハァ…」と小さくため息をつき俺の方を見る。


嬉しくないのか?困った様な表情の柚。でも気を取り直した様に席を立ちこちらへ来る。




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