溺愛〜ラビリンス〜
「分かった。」
健人の返事を聞いていた所で俺の携帯が鳴った。 健人と視線を合わせ、携帯を通話にして耳に当てる。
「はい黒田。」
『爽さんお疲れさまです。』
ユズユズ達の足取りを追うよう指示していた小田からの連絡だった。
「お疲れ。どうだ何か分かったか?」
『はい。水族館から足取りを手分けして追いました。』
「それで?」
気が急いて報告を急かせてしまう。健人もじっと視線をこちらに向け、俺の会話を聞いている。
『はい。あの…まだ途中経過になりますけど…水族館でかなりの時間を過ごしています。昼食もここの中で摂っていて、夕方近くに水族館を出ています。』
「そうか…で、その後の足取りは?分かっているのか?」
『はい。姫達を乗せた車は、水族館近くの見晴らしの丘に向かったそうです。』
「見晴らしの丘?」
『はい。水族館やこの辺りを見渡せる展望台が整備されている丘です。見晴らしが良いのでカップルのデートスポットになっている場所みたいです。』
「チッ」
何がデートスポットだよ。こっちがこんな大変な時に…思わず苛々としながら小田の報告を聞いた。