溺愛〜ラビリンス〜
『今、下の奴等に見晴らしの丘とその周辺の調査をさせています。すみません今の所、見晴らしの丘に向かったという足取りまでしか判明していません。』
小田が申し訳無さそうに報告を終えた。
「いや短い時間で良くやってくれて助かっている。引き続き調査を頼む。」
『はい分かりました。』
「みんなにも、もう一息姫の行方を掴むまで頑張るように言ってくれ。」
『はい。また何か分かったらすぐに報告します。』
「頼む。」
『失礼します。』
通話が終わって携帯を耳から離すと、健人が待ち構えたように聞いてくる。
「爽!どうなんだ?」
「あぁ…水族館で夕方まで過ごした後、付近にある見晴らしの丘って所に行ったらしい。今分かっているのはそこまでだ。」
俺が小田の報告をかい詰まんで話すと、健人はユズユズの行方が分かった訳ではない事にがっかりしたような表情をしている。
「何か分かったら随時報告がくる。焦らず待とう。」
「あぁ…そうだな。ハァ…」
健人は気持ちを落ち着けるようにため息を吐いた。