溺愛〜ラビリンス〜
腕を緩め、体を離して顔を見ると、柚の瞳は涙で濡れていた。俺が柚を泣かせてしまった…そんな罪悪感の気持ちと柚の心の中に涙させるだけの十字架を背負わせた事への高揚感…
「ゆうくん…」
「柚…柚の気持ちを受け入れると言った。…だから柚の気持ちが翔真に向かうなら…俺は柚の気持ちを尊重する。だけど……今夜は一緒にいて欲しい。最初で最後だ。……柚を今日だけ俺にくれ……それで柚の事をこの想いを諦める。」
気がつくと俺は感情のままに口走っていた。
「ゆうくん…」
俺の言葉に戸惑っている柚に、これが一生で一度の柚への頼み…もうそれ以外望む事はない。これから先の人生がどうであろうと、この時だけの為に俺のこれまでがあったんだと思った。だから柚に最後のわがままを言う。例え卑怯だとしても、柚の優しさにつけ込んでこの想いを遂げたい。
「頼む…」
「ゆうくんは……それで良いの?」
柚が俺の本心を探るように聞いてくる。
「あぁ…俺はそれしか望まない。」
きっぱりと言い切った俺に柚は悲しそうな表情をする。
「ゆうくん…私は……」