溺愛〜ラビリンス〜
「柚…」
俺が呼ぶと、やっと柚は視線を車窓からこちらへと向けた。その顔は不安と罪悪感から自分を責めているのが分かる。
「心配すんな。翔真は柚の事を置いて逝くような奴じゃない。」
「…ッ、うん。」
「昨夜の事は…柚のせいじゃない。全て俺の責任だ。ちゃんとおばさんや渉達には俺が話すから心配すんな。」
「ゆうくん…でも!」
柚は納得がいかないようで、泣きそうな表情で言い返してくる。俺はそれをできるだけ優しい言葉で遮った。
「柚、俺が悪いんだ。俺が柚にあんな風に頼まなきゃ、柚はきちんと家に帰っただろう?」
「…それは…」
柚は口ごもってしまった。俺に気を使っているんだろう。
「俺が悪い。柚をこんな状況に巻き込んですまなかった。」
俺が頭を下げると、柚は俺の腕をギュッと掴んで首を振った。
「ゆうくん…頼みを受けたのは私だよ?その時点で私の意思なんだから、私も悪いの。ゆうくんだけが悪いんじゃないよ。」
「柚…兎に角、病院に着いたらお前はすぐ翔真の傍に行ってやれ。おばさん達への説明は俺がする。良いな?」