溺愛〜ラビリンス〜
吉井の返事を受け、爽と視線を合わせて頷き合うとマンションの入口へと向かう。
「ご苦労さん」
爽は歩き出すと吉井達に労いの言葉をかけ、俺に続いて入口へと向かった。
島谷の部屋は調査済みだから、迷う事なく部屋番号を押した。
『…はい』
インターホンから聞こえてくる島谷の声に気持ちが逸る。俺は深く息を吸って口を開いた。
「鈴原だ。話しがある。出て来てくれ。」
『……。』
俺の問いかけに何の反応もしない島谷に苛つき声を荒げる。
「おい!聞いてんのかよ!返事しろ、島谷!!」
『あぁ…聞いてる。今、下りて行くから待ってろ。』
「…分かった。」
下りてくると言った島谷の返事に胸を撫で下ろし爽と視線を合わせ頷き合う。
待つ事数分後、約束通り下りて来た島谷は俺達の前に立っている。
「…で?何の用だ?」
俺達を前に慌てるでも怖じけずくでもなく飄々とした様子で切り出す島谷は、既に翔真の件を知っているのかもしれない。