溺愛〜ラビリンス〜

「悪いが今回だけはどうしても譲れない。すまない…」


「お前ふざけんなよ!翔真が大怪我して手術中なんだよ!もしもの事があった時、姫がどんな罪悪感に苛まれるか分かってんのかよ!翔真だって、大変な状態なんだ、一番姫に傍にいて貰いたいって思っている筈だ。こんな状況でも姫を返さないって、自分達を優先させるって、そんな自分勝手な事があるかよ!」


爽が島谷の返事にぶちギレて怒鳴った。爽の言っている事は間違っていない。今、この状況で一番優先されるべきは、翔真の容態だ。


「…分かっている。キングの事を優先させなきゃいけないのは…でも何で今日なんだ?悠斗にとって…最初で最後の…もう…次のない、そんな時間なんだよ!そんな時に何でよりにもよって、キングがこんな事に…」


爽の言葉に言い返してくると思っていた島谷は、俯きかげんで声を震わせて言葉を発した。
その表情は見えないが、黒王子の事を思い泣いているのが分かった。


「…島谷…お前達の事情も気持ちも分かるが、そんな事をして姫は元より、黒王子だって喜ぶのか?俺が知っている黒王子は、翔真と互角に正々堂々と姫を争っていた。卑怯な真似や姑息な手段を使うような奴じゃねぇだろ?」




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