溺愛〜ラビリンス〜
俺の言葉に島谷が息を飲んだ。
「自分の想いを遂げたって、翔真にもしもの事があった時、黒王子は自分を許せねぇんじゃないか?まして、愛する姫に自分のせいで罪悪感を…心に傷を負わせてしまったら、その事にも自分を責めるんじゃねぇか?こんな事して本当に幸せになれんのかよ!みんな不幸になるだけだろうが。」
俺の言葉に島谷はもう何も言い返さなかった。静まりかえった空気を破ったのは島谷だった。
「…そうだな。ハァ…何でこんな事に…」
「…島谷…」
俺の方を向いた島谷は、もう迷いのない瞳をしていた。
「分かった。悠斗に連絡をとってみる。」
そう言うと島谷は電話をかけ始めた。
コールはしているが出る気配がない。
「駄目だ。」
通話を切った島谷は首を横に振る。
「少し時間をくれないか?悠斗にこの状況を説明して、できるだけ早く柚ちゃんを病院に連れて行くから。」
「…分かった。但し…そんなに長くは待てない。」
「あぁ…今から一時間経っても連絡が取れなかったら、二人がいる場所に直接出向いて対応する。」