溺愛〜ラビリンス〜

「ッツ…」


爽がショックで息を飲んだのが分かった。


「おばさんは?」


「手術室の前にいる。おじさんもかけつけて一緒にいる。」


「そっか…」


俺達は無言になって、重い空気が流れる。


「兎に角、手術室の前に戻ろう。」


渉にそう言われ、爽と二人頷いて歩き出す。


「渉…ロビーで何してたんだ?」


爽が歩きながら話しかける。


「柚ちゃんに電話かけてた。お前達だけに任せっぱなしって訳にはいかないからな?」


渉らしいな…どんな時でも冷静に影でみんなのフォローをする。


「…そっか…で、どうだった?連絡ついたのか?」


渉はため息を吐いて首を横に振った。


「ハァ…仕方ねぇな…島谷から何れにしろ連絡がくる。もう少しの辛抱だ。」


俺の言葉に渉も表情を緩めた。


「あぁ…」


廊下を曲がって手術の前に集まる人影が見えてくる。
翔真の両親と凌の姿があった。

凌が俺達に気がついてベンチから立ち上がってこちらへくる。




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