溺愛〜ラビリンス〜
俺がそう言うと、隣にいる爽が
「家に帰っても、翔真の事が気になって…ここにいる方が良い。」
と言った。おばさんは爽を、優しい眼差しで見ながらおかしそうに笑った。
「ありがとうね…翔真は本当にあなた達みたいな良い友達を持って幸せだわ。」
そう言って微笑んだおばさんの目には涙が浮かんでいた。そんなおばさんの肩をおじさんが抱きしめた。
突然、空気を変えたのは手術中のランプが消えたからだった。
「おばさん!」
いち早く気づいた凌が声を上げる。
みんなすぐに手術が終わった事に気づき、手術室の扉に視線を向けた。
緊張した雰囲気の中、扉が開いた。中から手術を執刀した医師が出てくる。
「先生!」
おばさんが執刀医にかけ寄る。
「無事手術は終了しました。思ったよりも複雑骨折だったので手術に時間がかかってしまいました。それと…事故の際にもそうですが、手術中もかなり出血しています。手術そのものは成功しましたが、まだ予断を許さない状態です。」
「…はい。」
おじさんに抱きしめられながら話しを聞いているおばさんが小さく返事をした。