溺愛〜ラビリンス〜
少し疲れた笑顔を向けるおばさんに凌が心配そうに声をかける。
「おばさん、無理しないで下さいね?」
「ありがとう。」
「じゃあ、行くぞ?」
渉の言葉に俺達は歩き出した。
病院の玄関まで来ると渉と凌が話し出す。
「渉…ユズ姫の行方、どうする?」
深夜の時間、いい加減何とかしないとおばさん達も翔真の事で一杯一杯でユズ姫の事に触れないけど、心配しているはずだ。翔真の事だけでなく、ユズ姫の事でまで心労をかけたくないのはここにいる全員が思っている事だ。
「…そうだな。健人達が島谷と別れてからどれくらいだ?」
「2時間以上経っているな…」
俺が答えると、爽が苛々しながら口を挟む。
「アイツ、連絡つかなければ一時間後には、俺達に連絡するって言ってたくせに!ったく、約束破る気か?」
「どうする?」
凌が渉に指示を促す。
「取り合えず健人、島谷に連絡入れてみろ。それで出なかったり、島谷の対応によっては次の指示を出す。」
「了解。」
俺は携帯を取り出しかけ始める。短いコールの後、通話になった。