溺愛〜ラビリンス〜
再度悠斗に電話をする。 また出ないか…諦めかけていた時、コールが途切れた。
『何だ?』
低い声で不機嫌に携帯に出る悠斗に、俺はできるだけ冷静に話しを切り出した。
「悠斗…落ち着いて聞いてくれ。」
俺の様子がおかしかしい事に気づいた悠斗は、先程までの苛立ちを押さえたのが電話口でも分かった。
『どうした?』
「…キングが事故に遭って意識不明だ。」
俺の言葉がすぐに理解できなかったのか、悠斗はすぐに言葉発しなかった。
『……どういう事だ?』
凄く低い声で、俺を威嚇するように聞いてくる悠斗に、俺は状況を淡々と説明すると、悠斗は逆上したように怒鳴った。
『悠斗…それで良かったのか?俺も大輝も迷ったが、悠斗と柚ちゃんにとって最後の時間だと思うとどうしても知らせる事はできなかった……悠斗の…今までの想いを知っているからできなかったんだよ!』
このやるせない状況に、悠斗だけじゃない、俺や大輝だってどうしたら良かったのか、迷いながら悠斗の想いを全うさせてやりたかったんだ。何時になく感情的になってしまった俺に、悠斗はもう何も言ってこなかった。