溺愛〜ラビリンス〜

森が車を降りて後部座席のドアを開ける。俺も助手席から降りて辺りを確認する。こんな時間だから念には念を入れておかないと…もしもの事もある。辺りは静まり返り、問題なさそうだ。
森が開けたドアから、悠斗が降りる。そして車内に手を差し出した。


「柚…」


悠斗の手を取り柚ちゃんが車を降りてきた。
丁度その時、病院の自動ドアが開いた。

中からブラックホークスの奴等が出てくる。


「柚ちゃん!」


「ユズユズ!」


「「ユズ姫!」」


ブラックホークスの幹部達は、柚ちゃんの傍に駆け寄る。


「みんな…勝手な事をして心配かけてごめんなさい…」


柚ちゃんは、深々と頭を下げた。


「柚が悪いんじゃない。俺が柚を引き留めて無理矢理帰さなかったんだ。柚を責めないでくれ。」


悠斗が幹部達に向かって頭を下げる。


「悠斗!」


折原が悠斗の名前を呼ぶ。頭を上げた悠斗と視線が合った折原が、悠斗目掛けて殴りかかった。

バキッ


「悠斗!」


俺は慌てて止めに入り、折原を睨みつける。


「龍也…いい…下がっていろ。」


悠斗が低い声で俺に命令を下してくる。




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