溺愛〜ラビリンス〜
悠斗の唇は切れて血が滲んでいる。それを冷たい眼差しで睨みつける折原は、俺達、任侠の世界に身を置く者でも背筋が凍るような迫力だ。


「渉くん！ゆうくんを殴らないで…私が悪いの！だから…もう止めて…」


柚ちゃんは悠斗と折原の間に立ち、そう言うと泣き出してしまった。


「ユズユズ！大丈夫だから…泣くなよ。」


「渉、ユズ姫の気持ちも考えろ！」


柚ちゃんを慰める黒田と、折原を諫める秋津がこの場の雰囲気を変えようとしていた。


「…分かっている。でもな？出掛ける時、どういう約束だった？どんな理由であれ、悠斗が翔真との約束を違え事に変わりない。それが時期坂本組組長のやり方なのか？」


折原はとても痛い所を突いてくる。


「…悪かった。」


悠斗はただ謝る。ぐうの音も出ないとはこういう状況だな…俺はどうして良いか分からず、ただその場を見守った。


「翔真の手術はさっき終わった。予想以上の出血で術後もまだ危険な状態が続いている。そんな時に…柚ちゃんを引っ張り回して…もし、翔真に最悪の事があったら…どうするつもりだったんだ！」


折原はまだ許せないようで悠斗を責めた。




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