溺愛〜ラビリンス〜

「渉くん…ごめんなさい。私…翔兄ぃがそんな状態になっているのに…家に連絡もしないで…ごめんなさい。渉くん…私…翔兄ぃの傍に行っても良いかな?」


柚ちゃんは声を震わせ自分を責めながら、それでもキングの事が心配で仕方なくて、迷っているようだった。


「柚ちゃん、当たり前だろ。翔真は意識がずっとないけど、柚ちゃんに傍にいてもらいたいに決まっているよ。だからそんな顔しないで…翔真の所に行こう?」


折沢は柚ちゃんに優しく促し、キングの病室へと連れて行こうと手を取り歩き出す。


「渉くん…良いの?」


柚ちゃんの目から涙が溢れた。


「柚ちゃん…良いんだよ。翔真の傍にいてあげて?柚ちゃんが傍にいないと、翔真は目を覚まさない気がするから、傍にいてくれないと困るんだよ。」


優しい笑顔で言う折沢に、柚ちゃんは頷き歩き出した。

折沢は幹部達に目配せし、幹部達はそれに頷いていた。



二人の姿が見えなくなると秋津が口を開く。


「もう姫に近づくな。」


その声は低く、悠斗に対する嫌悪感と苛立ちが感じられた。




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