溺愛〜ラビリンス〜
硝子の向こにいる翔真を二人はじっと見つめていた。
翔真は包帯を巻かれ、酸素マスクをしていて見るからに痛々しい状態だ。それでも二人は目を反らさず翔真を見ている。
「翔兄ぃ…良かった。ちゃんと…生きていて…翔兄ぃにもしもの事があったら…私…ッ…ヒック…どうすれば良いか…」
柚ちゃんは翔真の姿を確認してホッとしたのと、変わり果てた姿へのショックからか泣き出してしまった。仕方ない…俺達だって翔真のこの姿にショックを受けているんだから、柚ちゃんのショックは俺達の何倍もの大きさだろう…
「柚…翔真は今頑張っているの。私達も精一杯、翔真の看病をしなきゃね?泣いてる暇なんてないのよ!私達も翔真と一緒に頑張らないと…」
おばさんは柚ちゃんの肩を抱きしめた。力強く柚ちゃんを励ますように言う言葉は、本当は自分自身に言い聞かせているみたいだった。
「うん…私、翔兄ぃが目覚めるまでずっと傍にいて看病する。お母さん、頑張ろう!」
「柚…えぇ、頑張ろう!」
二人はもう笑顔だった。翔真が目覚める事を信じているんだろう。もうクヨクヨした後ろ向きな気持ちはまるでないようだ。