溺愛〜ラビリンス〜
「渉くんありがとうね。日付が変わるまで付き合わせちゃったわね。もうお家に帰って休んでちょうだい。ここは私達がいるから…ね、柚?」
おばさんがそう言うと柚ちゃんはコクンと頷いた。
「渉くん…色々ありがとう。何かあったら連絡するからゆっくり休んで。」
柚ちゃんは穏やかな表情で笑顔を向けてくれた。
「うん…分かった。何かあったらすぐ連絡して。」
「うん。」
柚ちゃん達との会話を終えて、視線を硝子越しに向ける。
目を閉じたままの翔真を数秒見つめ
「じゃあね」
と言って歩き出した。
静まり返った薄暗い廊下を歩き玄関へと向かう。
兎に角、柚ちゃんを翔真の元に戻した。後は全て翔真が目を覚ましてからだ…今回の事、翔真がどう受け止めるか…柚ちゃんは翔真と悠斗の間に立ってどうするのか?
正直、俺にもどうするべきか分からないけど、もうここまできたら、当事者達が気持ちのままにぶつかって結論を出すしかないと思う。俺達が口を出す段階にないだろう。
「…ハァ。」
ため息を吐いて歩くスピードを上げる。
早足で玄関に向かうと、凌達が立ち話をしているのが見えた。