溺愛〜ラビリンス〜

俺はみんなに近づきながら声をかけた。


「お疲れ。悠斗は帰ったのか?」


みんなの輪の中に悠斗の姿はなかったからそう聞いた。


「あ…あぁ…さっき帰った…」


凌が歯切れの悪い口調で返事をする。何だか様子がおかしかった。よく見ると、一緒にいる健人と爽の様子もおかしい。


「…何かあったのか?」


悠斗達とあの後揉めたのかと思い聞くと、呆然としたまま健人が口を開く。


「黒王子が…」


「?…悠斗がどうした?」


「もうユズ姫に会わないって…」


「…ハッ?」


悠斗が、柚ちゃんにもう会わない?どう言う事だ?意味が分からず、大きな声を出してしまう。静まり返る病院の玄関に、俺の声が響き渡り慌てて口を閉じた後、小声で聞き直す。


「どう言う事だよ?」


「渉達が翔真の所へ行った後、俺達は黒王子に今回の事について詰め寄った。いつものように持論を言い返してきてユズ姫から離れないだろうと思ってたら…一言、『俺達は終わった…もう柚には今までのように会わない』って言って、呆気に取られている俺達を残して帰って行った。だからそれ以上の事を聞けなかった。すまない…」





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