溺愛〜ラビリンス〜
駐輪場まで行くと、それぞれのバイクに跨がりエンジンをかけた。
「ここで解散にする。みんな居眠りして事故ンなよ?気をつけて帰れ。」
「「「了解!」」」
俺の号令に凌達はそう返事をすると、勢いよくバイクをスタートさせた。俺も一呼吸遅れてスタートする。
ブォーン
静かな時間帯にバイクのエンジン音が響き渡る。それぞれの自宅への道へと別れ散り散りになった辺りで、さっき聞いた悠斗の言葉が過り不安になった。
俺にとって一番の親友は翔真で、柚ちゃんとの事もやはり翔真を応援してしまう。その事は悠斗にも宣言したが…今まで長く想ってきた悠斗の柚ちゃんへの気持ちが、そんな簡単なものではない事も分かっている。
だからそんな事を悠斗が言うなんて信じらないし、事実だとして悠斗は大丈夫なのだろうか?柚ちゃんと言う唯一無二の存在を失った穴は、悠斗にとっても翔真にとっても大き過ぎるんだ。
俺は翔真を応援しているけど、何だかとても切なくやりきれない思いが胸を締め付けた。
柚ちゃんを中心としたこの複雑な関係は、柚ちゃんの重い覚悟の上の結論に確かに動き出していた。でも今、誰も幸せな気持ちでいる者は居ない。
みんなが幸せな顔で笑い合えるようになって欲しい…帰路を進みながら願わずにはいられなかった。