溺愛〜ラビリンス〜
看護師さんは私に励ましの言葉をかけてくれるので、引きつりそうになる顔を必死になって、何とか笑顔を作って頷いた。
「看護師さん…翔真が目覚めるまで、私と彼女で付き添いたいと思ってるんだけど、良いでしょうか?」
お母さんは何としても翔兄ぃの傍を離れないという意気込みがひしひしと伝わる程の勢いで看護師さんに頼み込む。
「この病院は完全看護ですから、お気持ちは分かりますけど…日中お見舞いに来るだけで充分だと思いますよ?それに…翔真くんは、いつ目を覚ますか分からない状態だし、そんな事しているとご家族の方が先に参ってしまいますよ?」
看護師さんは困ったように、だけどはっきりと思った事を言ってくれた。
「…分かってます。でも、後悔したくないんです。もし…翔真がこのまま目覚める事がなかったら…嫌な事、考えたくないけど…もしそうなったら…できる限りの事してなかったら、後悔して許せなくなってしまうと思うので…先に参ってしまっても良いから、付き添わせて下さい。」
真剣なお母さんの視線に、看護師さんが諦めたようにため息を吐いた。