溺愛〜ラビリンス〜
確かにあの頃から現在まで私がお父さんに怒られた事はない。流石に今回は怒られるのかなって覚悟してたけど…やっぱり怒られなかった。
でも…私は気づいてしまった。さっきお父さんが私の決めた事を応援してくれるって言ってくれた時、お父さんの声は震えていた。
お父さんが私の事をどれだけ大事に思ってくれているのか、とても伝わってきて、私はこのお父さんとお母さんの娘として育って良かったと思った。
「あなた、そろそろ行かないと間に合わないわよ?」
お母さんの声にお父さんが反応する。
「あっ、そうだな…じゃあ、此処は二人に任せて、俺は会社に行く。翔真に何かあったら、すぐに連絡してくれ。」
「えぇ…」
「お父さん行ってらっしゃい!」
お母さんと二人でお父さんを見送ると、頭がさっきより冴えてきて、辺りの状況を見回した。
夜中の時間帯は人気もなく、静まり返っていた廊下は、看護師さんや医師など病院の職員を始め多くの人が行き交い雰囲気が全く違っていた。
「もう少ししたら、ICUの病室に面会で入る事ができるそうよ。」
辺りを見回している私にお母さんが教えてくれる。