溺愛〜ラビリンス〜

「了解」


背後から二人の声が聞こえた。




部屋の中に入るとリビングのソファーに座る。


「ハァー。」


ため息を一つつき柚の事を想う。今何をしてる?困ってたり泣いてたりしてないか?できればいつも側に居たい。お前の顔を見たい。
今日は会えたの朝だけだったな…




柚とはガキの頃からずっと一緒だった。母親に連れられ柚の家に行ったり、柚達がうちに来たり…物心ついた時には側にいるのが当たり前だった。

柚はいつも俺の事を「ゆうくん」と呼び俺の後をついて回った。
小さい頃は俺について来てよく転んで泣いていた。背後で柚が転ぶと俺は慌てて柚に駆け寄り、泣いている柚を起こして家まで連れて帰った。


「ゆうくんありがとう。」


いつの間にか泣き止んで笑顔で礼を言う柚に素直じゃない俺は、プイッと照れて横を向くのがいつもの俺達のパターンだった。


少しも優しくできない俺を嫌う事もなく幼なじみとして付き合ってくれた柚。いつから俺はお前の事が好きになったんだろう?


柚の事を考えている時間なんかないのに気が重く出かける準備をする気になれない。





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